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わざわざ兄と父の喧嘩を止める事など、
僕は考えて無かった。
母と姉も見当たらない。
止める気などないのだろう。
そのレベルの痴話喧嘩...
僕は部屋に戻る前に庭に回ってプールサイドの椅子に腰掛けた。
プレゼントされた新車のボンネットに乗っていた
父の字では無い。
明らかな代筆メッセージ
小さな紙切れ。
最後まで読まず、丸めてプールに投げ込んだ。
しばらく、その紙切れが浮かんでいるのを見ていた。
面白いことなど何も無い。
頼んでもいない贈り物だ。
嬉しくもない。
要らなくもない。
当然、感謝の言葉をかける気もない。
求める者もいない。
それが我が家だ...
明日から自分の車で登校する。
それだけだ。
そろそろ部屋に戻ろう。
振り返る。
ガラス張りのリビングの中では、まだ口論が続いているように見える。
正直予想外だった。
だが無視をすれば横をすり抜け自室に行ける。
安易にそう考え
玄関へ向かい、扉を開けた。
エントランスにまで響き渡る兄の声
うるさい。
それでも僕は内容に違和感を感じ、
耳を澄ました。
兄は仕切りに
"金を使わなければ父親しての存在意義も無い"
と喚いている。
この当たりはいつもと変わりない。
しかし、父が珍しく、頑として言い張っている。
"自慢にもならない息子に、金を与え、その結果
恥晒しな行動に出るのが目に見えていて、
何故まだお前えを息子とし
金を与えてもらえると思う。
弟を見ろ。
同じ兄弟で、ここまで違って何故まだお前に投資すると思うんだ。
お前につぎ込む分を、全て弟につぎ込む
簡単選択肢だ"
成程、いつもと違う訳だ。
湧いて出ていたと思った金が突如
条件を満たさなければ、湧かぬ泉になったのだ。
そして僕は光栄にも父のお眼鏡に叶ったようだ。
正直、嬉しくない。
張り合う相手が、兄なのだから。
当然の勝利だ、努力も必要ない。
僕の勝負など所詮こんな狭い世界にしか、ない。
大学へゆけばもっと張り合いが持てるに決まってる。
僕に家族など要らない。
この日僕の思いは確信的だった。
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