盗み撮る

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彼女ができない己自身に業を煮やした今野が、盗撮のために改造人間になることを決意したのは5月下旬ごろの話である。 正々堂々お付き合いを申し込んで、申し込んだ数だけ断られる生活に飽き飽きしていたのだ。大学にもしばらく行っていない。大学に行って同級生たちに彼女の話をされるとむかつくからである。なので、最近は授業を全部サボって街中を歩くことを習慣としていた。 そこでせめてパンチラでも見られれば生きる望みも湧くのだが、東京ならまだしも札幌の淑女たちは隙がない。今野はパンチラのために丸一日を無駄に浪費することも珍しくなかった。当たり前だが、チラっとも見えないのである。両足をキャタピラに改造すれば車高が低くなり、パンチラの機会も増えるだろうが、今野にはパンチラのために両足を犠牲にする覚悟はなかった。 その後も日々は過ぎていった。 今野は女性に近づいてパンチラを期待しつつ、駄目だった場合に交際を申し込むという二毛作にチャレンジすることもあったが、結果は散々なものである。 チャラ男を真似てナンパ風に声かけをすることもあったが、全く駄目だった。今野はお店を全然知らないのだ。ナンパをしても行く場所がわからない。だから声をかけて女性が多少乗り気になっても、「ああうあ」と戸惑うのが常だった。知っている店と言えばラーメン大将くらいなのだ。 ラーメン大将なら北18条駅から目隠しをしていても辿り着くことができる。それで一度車に轢かれたことがあるのだが、大事には至らなかった。日頃の行いが功を奏したのかもしれない。その日からは一日一日を大切に生きている。大切に生きた結果がパンチラを探して街をさまよい歩くという日々なのだから、もしかすると車に 轢かれて死んだ方がよかったのかもしれない。 交際の申し込みも駄目、パンチラも駄目となるとどうしようもない。八方ふさがりになってしまった今野は、冒頭のように改造手術を考えるようになっていた。キャタピラとはいかずとも、足や指先に超小型テレビを取り付ければ、自然な流れでパンチラを拝むことができる。追い詰められていた今野にとって、それは何よりも重要なことだった。 <続く>
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