すこっぷ

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 持ち時間は1組につき15分で、スグルたちはバンドのカバー曲を3曲演奏するつもりだった。 「おれたちはまだバンドを始めて1年くらいだし、プロになりたいと思っているワケじゃない。でも、何か、決められた15分の中で『おれららしさ』みたいなものを出せたらいいなって思って」 「例えば?」  チハルがキョトンとした表情で訊ねる。 「だから、それをみんなで考えるんだよ」  スグルは重なったスペアタイヤから飛び降りて、椅子に移動した。みんなを集めるようにテーブルの上で手招きする。4人がテーブルを挟んで向かい合うと、テーブル上に放り投げてあった朝刊から片面刷りの広告を抜き取り、裏返して、白紙部分に汚い字ででかでかと「すこっぷの文化祭ライブパフォーマンス案」と書いた。 「改めて見ると、『すこっぷ』ってバンド名もヤバイ気がしてきた」  スグルの書いた字を見つめながらオウスケが呟く。 「KAT-TUN方式で、みんなの頭文字から付けようって言ったのオウちゃんだからな!」  チハルがムッとした表情で答えた。  スグル(SUGURU)のSとチハル(CHIHARU)のC、オウスケ(OHSUKE)のOにポール(PAUL)のP。4人の頭文字を取って、SCOP(スコップ)。
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