すこっぷ

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「先輩たちが応援してくれるなら、俄然テンションが上がって来た」  衣装に着替えると、スグルは教室の窓から外を眺めた。校舎の2階に位置するこの教室からは、校庭が見える。文化祭が行われる土日は、校庭は保護者用の駐車場と化していた。闊歩する保護者や生徒が見える。 「よおし、土下座覚悟でやってやるぜ!」  スグルは高らかに声を上げた。「おー」と仲間達も気合いの籠った声を上げた。  暗幕で密封された体育館は、サウナのようだった。舞台裏に待機する「すこっぷ」の面々は、前のバンドの演奏を袖で眺めながら、汗を拭った。9月と言っても、夏はまだまだ続いている。なるべく先生たちに気付かれないようにと、体育館でのライブを牛耳る先輩たちの計らいなので、文句は言えない。  前のバンドの演奏が終わると、早速4人は準備に取り掛かった。演者が捌けてステージが空っぽになると、巨大なビニールを背景に吊って貰った。舞台上にビニールシートが敷かれ、ガラガラとステージ下の、客席の前に大きな洗面器が置かれた台車が5台、設置された。  一体、何が起こるのか? とざわつく観客に、メンバーは自分の楽器のチューニングを始める。オウスケがドラムの前に座り、舞台袖に視線を送る。
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