すこっぷ

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 去年できたばかりのライブハウスは、綺麗でオシャレな雰囲気だった。キャパ100人くらいは入るだろうか? 採炭所の洞窟を彷彿させる岩のような壁に、地下1階の割に、天井がやけに高い。  ステージが客席から1メートル程高く、柵で区切られていた。大音量で響く音の中、バーカウンターでコーラを受け取ったスグルは、壁際に並んだ椅子に座った。  ステージ上では、バンドが演奏を始めていた。スグルの叔父のバンドだった。赤、青、黄色と、舞台上のライトがくるくると変わる。ジャンルはハードロック。オリジナルの楽曲だ。ドラムが刻むリズムに、スグルは足の先を動かし乗っていた。観客は閑散としていた。  柵の前を避けるように壁際に、ちらほらと寄りかかって、観客はステージを眺めている。 全部で8人だ。スグルは観客の数を右回りに数えていった。  手元に丸めていたパンフレットを広げ、チケットを確認する。5組による対バンだ。スグルがフロアに降りてくる時にすれ違った5、6人の客は外に出たまま、戻ってくる気配はない。再入場は禁止だ。彼らも自分と同じように、付き合いでムダ金払って、呼ばれた人たちだったのだろうか?
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