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まるでカツアゲされてる気分だ。中学生のおれからもきっちりチケット代取るし。
スグルは溜息が出そうになるのを飲み込んだ。
叔父さんはいつも違う女を連れていた。乳のデカイ、頭の悪そうな女だった。公然わいせつ罪になりそうな露出の多い服を着て、大抵、叔父さんが歌う姿を携帯で撮影している。
ステージ上では、次の出番のバンドが機材のチェックをしていた。スグルはグラスに残った氷をガリガリと噛みながら、叔父さんの話に付き合った。
「今度、タロウ先輩がフェスに出るらしくてさ、俺も関係者扱いで行けちゃうのよ」
「(誰だよ、タロウって。知らねえし) へぇ、凄いっすね。どこのフェスっすか? フジロック? それともサマソニ?」
()内はスグルの心の声だ。
「ふるさと元気だ! 真夏のカッパフェスだよ。お前知らねえの?」
「(何だよ、そのダセェネーミングのフェスは! 誰が行くの?) すいません、知らなかったです。今は全国、いろんなとこでフェスやってますからね」
愛想笑いで返した。いい人ぶって叔父に付き合う自分が嫌いだと、スグルは思った。
「来週の日曜だけど、お前も来る?」
「(どうせ、チケット代は自腹なんだろ?) いや、自分も夏休み明けに学祭ライブあるんで、練習しないと」
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