すこっぷ

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 3人は折り畳み可能なバーベキュー用の簡易テーブルを広げ、それぞれ好き勝手に過ごしていた。チハルはマイギターのチューニングをし、ドラム担当のオウスケは分厚い漫画雑誌を長椅子に並べ、ステッキを構え、エアドラムを叩いている。ベース担当のポールは、ベースを放り投げ、携帯のゲームに夢中だ。ちなみにポールはフランス人の父親を持つハーフで、ミドルネームがポールなことから、みんなからそう呼ばれている。 「ポカリ飲む?」   チハルの問いに頷くと、スグルは壁際に積み重ねられたスペアタイヤの上に腰を下ろした。自転車を降りた途端に、吹き出た汗を首に掛けたタオルで拭うと、チハルがグラスと、扇風機をスグルの前に差し出した。 「何か、イカレた奴みたいな雄たけび上げてたべ? スグルの声はよく通るから、ここまで聞こえてきたぞ」   あ、ばれてた? スグルは気まずそうな視線をチハルに向け、「実はさ……」と話を続けた。 「昨日、叔父さんのライブに行って来たんだけどさ」 「あぁ、あの両腕にバリバリにタトゥー入れてる、やべぇオッサンな」  チハルはスグルの叔父さんを思い浮かべて、頷いた。小学生の時に会ったことがあったのだ。
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