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「へえ、そうなんだ」
俊ちゃんとは優子の大学時代のサークル仲間だ。
「俊ちゃんね、もうすぐ結婚するんだって」
「それで?」
「...それで?」
「うん」
「それでね、彼女と一緒に暮らし始めたんだって」
優子は僕の目をしっかり見ながら誇らしい顔で言う。
「そうなんだ」
あまりにもどうでもいい事をいかにも誇らしげに言うので、少し呆れてしまった。
以前から俊ちゃんが付き合っている女性がいる事は聞いていた。そこそこ長く付き合っているはずだからそういう流れになるのもおかしくないだろう。でも、結婚を前提にした同居なんてありふれた話にも、俊ちゃん自身にも全く興味がない。俊ちゃんが結婚しようが、失恋しようが僕には全く関係のない事だ。
「俊ちゃんは1人暮らしの時より今がずっといいって言ってた 」
「そうなんだ。よかったね」
素直に思ったから、そう言った。
「よかった?」
怪訝そうな顔をした後、優子は黙ってしまった。優子はいつも小さな事で真剣に考える。
優子はコーヒーをゆっくりと1口飲み、しばらく考がえた後でいかにも答えがまとまったという表情をして
「そうと言えるかもしれないわね」
と、はっきり言った。
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