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優子はおいしそうに煙草を吸う。僕は煙草を吸わないのであまりよく分からないが、優子にとって煙草はいつも側にあって、なくては困るものだ。
「でも俊ちゃんは今を愛する人だから、どんな状況になっても今が一番いいっていうと思うわ」
「そうか」
納得は全然いっていないが、とりあえずそう言った。
「うん」
「優子はさ」
「ん?」
「優子はさ、これからもずっと結婚に向いてないのか」
突然その言葉が僕の口からぽんと出てきた。
「あたりまえじゃない。結婚を将来するかどうかは別にして、向き不向きにずっともなにもないじゃない」
心の奥に、真っ黒な川の流れのようなものを感じる。これは孤独なのだろうか。分からない。
「あのさ」
「何?」
「僕たちがひょっとして結婚するなんてことあるのかな」
真っ黒な川の流れが一瞬止まり、それから滝のように深いところへ、より深いところへと落ちていくのを感じる。
「わかってるでしょ」
優子はあっけらかんと言った。
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