明日海先生、奪いにきてよ

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　見たことも話したこともない人が、私の名前を知っている。それだけなのに私の中ではなつかしさに溢れ……ボロボロと涙が溢れ出していた。
　お母さんが死んで天涯孤独となった私を、こんな風に抱きしめてくれる人が現れるなんて思いもよらなかったのだ。すとん、と心臓に落ちていく安心感は……私にある考えをもたらした。

――これから何かあったとき、この人が望めば私はすべてを投げ出そう、と

　私がこんなことを考えてるなんて、アスモデウス……明日海先生は何も知らない。

明日海先生は、いつまで経っても奪いに来ない。
奪いに来ないなら……私から、投げ出すしかないのだ。