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「……笹原君、先生が保健室に連れていくので、大丈夫ですよ」
「は?なんで……俺は、沙羅の…!」
言い争いが始まるより先に、私は何もなかったかのようにすくっと立ち上がった。二人は目を丸めて私を見る。
「悪いって思ってるなら、カバン持ってよね」
「あ、ああ……」
「先生、私大丈夫ですから。……また、部活の時間に」
心配そう……というよりも、名残惜しそうな目で私を見つめる明日海先生を振り切って、私は陽介と一緒に校舎に向かった。
陽介からカバンをもらって教室に入ると、友達の千佳子がふらふらっと近づいてきた。
「陽介君、機嫌わる~」と大きなお世話みたいなことを言うので、先ほど、校門であった出来事を千佳子に話をすると、大きくため息をついた
「そりゃもう、恋のライバルって事じゃないの?」
「はあ?」
素っ頓狂な声を出す私を見て、千佳子はけらけらと笑った。
「誰と誰が?」
「もちろん、陽介君とアスミンが」
「どうして?」
「そりゃ、沙羅をめぐってよ」
「……なんで?」
「は?」
千佳子はさっぱり理解できないと言うように、頭を振った。しかし、理解できないのは私の方だ。
「だって、かわいい従姉妹と一つ屋根の下って、やっぱり普通の男の子なら色々期待しちゃうし、ドキドキしちゃうじゃん?」
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