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 アスモデウスは、今度こそサラの魂を奪いに来たに違いない。しかし私は、その彼の腹積もりを利用することにしたのだ。  この世界で、神様にあらがうことができる唯一の力を持つ……『悪魔』という存在に。 -- 「んあっ!」 変な声を出しながら、陽介がガバッと飛び起きた。周囲を見渡していた陽介は、ぐるっと私たちの方を見た。 「あ、起きた。陽介寝すぎ」 「え?え、何?ここどこ?」 「屋上ですよ、笹原君」  目が覚めたばかりの陽介には、事態が飲みこめていないらしい。  先ほどの、『私・笹原沙羅が、天文部顧問である明日海先生に迫っていた』という記憶は、悪魔・アスモデウスに消してもらった。  記憶が消えた陽介には、新しい記憶を擦り込む必要がある。 「うぇ!アスミン!?なんで?!」 「なんでって……また、『星見てる間に寝ちゃったんだって』、陽介は」 「そうだったっけ……だってしょうがねえだろ、つまんねーもん」  そう、陽介は星空観察会の度に私を心配して夜の学校にやって来る。そして、その度に明日海先生に迫る私を見て驚き、詰め寄るよりも前に、アスモデウスに記憶を消され、『星を見ていたら寝てしまった』という新しい記憶を擦り込まれる。何度も何度も繰り返して、最早、様式美となっていた。 「笹原君も見ますか?金星、綺麗ですよ」 「いや、いいっす」     
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