57人が本棚に入れています
本棚に追加
アスモデウスは、今度こそサラの魂を奪いに来たに違いない。しかし私は、その彼の腹積もりを利用することにしたのだ。
この世界で、神様にあらがうことができる唯一の力を持つ……『悪魔』という存在に。
--
「んあっ!」
変な声を出しながら、陽介がガバッと飛び起きた。周囲を見渡していた陽介は、ぐるっと私たちの方を見た。
「あ、起きた。陽介寝すぎ」
「え?え、何?ここどこ?」
「屋上ですよ、笹原君」
目が覚めたばかりの陽介には、事態が飲みこめていないらしい。
先ほどの、『私・笹原沙羅が、天文部顧問である明日海先生に迫っていた』という記憶は、悪魔・アスモデウスに消してもらった。
記憶が消えた陽介には、新しい記憶を擦り込む必要がある。
「うぇ!アスミン!?なんで?!」
「なんでって……また、『星見てる間に寝ちゃったんだって』、陽介は」
「そうだったっけ……だってしょうがねえだろ、つまんねーもん」
そう、陽介は星空観察会の度に私を心配して夜の学校にやって来る。そして、その度に明日海先生に迫る私を見て驚き、詰め寄るよりも前に、アスモデウスに記憶を消され、『星を見ていたら寝てしまった』という新しい記憶を擦り込まれる。何度も何度も繰り返して、最早、様式美となっていた。
「笹原君も見ますか?金星、綺麗ですよ」
「いや、いいっす」
最初のコメントを投稿しよう!