57人が本棚に入れています
本棚に追加
「もったいない、絶好の観察日なのに」
私は天体望遠鏡をのぞいた。糸の様に細い月の斜め上で、金星がキラキラ輝いている。
明日海先生は、金星が好きだ。マジリスペクトしている悪魔のボス・サタンこと堕天使・ルシファーを表す星だから、らしい。
今の表情は私が迫っている時よりもキラキラしている。それがちょっぴり……いや、すごい腹立つ。
「あ、流れ星」
ぼんやりと空を見上げていた陽介は、ぽつりとつぶやいた。
「え?どこにですか?」
「あそこから、ひゅーっと」
「説明わかり辛い……」
「まあまあ、いいじゃないですか。……いいですね、僕はまだ流れ星見たことがありませんよ」
「……金星ばっかり見てるからですよ」
「何か嫌味っぽい言い方ですね、笹原さん。……笹原さんは、流れ星に願いをかけるとしたら、どんな願いをかけますか?」
その手の質問に、生まれてこの方、一度も悩んだことがない。
最初のコメントを投稿しよう!