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「陽介、早く早く、遅刻するよ」
「沙羅、お前、そんなに急いだら体が……!」
「これくらい大丈夫だって!」
昨日の晩、観察会で夜更かししたせいか、陽介の奴、寝坊した。
私たちはなるべく急いでバス停に向かったけれど、バスは目の前で発車してしまい……敢え無く次の、遅刻ギリギリになるバスに乗るほかなかった。
だから、いつものようなのんびりした足取りでは遅刻してしまう。なのに、陽介は『そんなことよりも、お前の体の方が大事』と譲らず、ゆっくりと歩くのだ。
「私だって、最近調子いいし」
「それは、ちゃんと薬飲んでるからだよ。お前のお母さんだって、そうやって大丈夫大丈夫って言って、仕事で無理したから、あんなことになったんだろ」
私のお母さんは元々不整脈を患っていて、それが原因で心不全を起こして死んでしまった。それが2年前、私たちが中学3年生の時だ。
それから、私は陽介と伯父さんが暮らすマンションで一緒に暮らしている。
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