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こんなときばっかり、悪魔だけがもつ不思議な力をつかうのだ。私を生かしたり、わざと空き時間をつくったり。  保健室には誰もいなかった、明日海先生は「先生、何か用事ですかね」と相変わらずのんきに呟いた。まさか、自分が私と二人きりになるように図ったくせに。  明日海先生は保健室の棚に閉まっている私の薬と、水が入った紙コップを手渡してきた。私はそれを飲み、ベッドに横になる。明日海先生は保健室のカーテンと、ベッドをかこっているカーテンを閉じた。また軽々しく密室を作るのだ、この人は。  ベッドの脇にある丸椅子に座り、先生は私の前髪に触れた。 「……死なせてくれたらよかったのに」 「そんなこと、絶対にさせない。ほかの『サラ』と同じように、僕が必ず幸せな天寿を全うさせてやる」 「悪魔のくせに」 「君が『サラ』だからな」  指先に、先生のネクタイが触れる。  私はそれを引っ張り、明日海先生の顔を引き寄せた。私も少しだけ体を起こし、目を丸くさせている明日海先生の唇に口づけた。  触れあった唇は、想像以上に温かかった。首を傾け、さらに深く口づけていく。明日海先生は体を引こうとするが、首に回した腕の力を強めると、あきらめたように力を抜いた。 「サラ、急に何を……」 「先生が、奪いに来ないから」     
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