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 奪っちゃった、と冗談めかして告げると、明日海先生は深くため息をつく。 「長い時間生きてきたけど、こんな『サラ』は初めてだよ」 「ねえ、先生」 「ん?」  開きかけた口をつぐんだ。そして、首に腕を回して、耳元で息を吐きながら「なんでもない」と囁いた。その小さな刺激でさえ明日海先生には強烈だったようで、明日海先生の耳は赤くなった。  あの、アスモデウスが現れた晩……私は救われた気がしたのだ。自分の運命の行く末から、逆らうことのできる存在が現れたことに、それこそ、神様に感謝をするくらい、  あの晩、小さなゴンドラに現れたアスモデウスは、すべての頭についている目を丸くさせていた。まるで『信じられない』とでも言うように。  私は小さく、口を開いた。 「……あなたは?」  小さな声で問うと、彼のしっぽが私に伸びて……頬を伝う涙をぬぐった。その異形な姿を見て、私は一つの考えが浮かんできた。 「もしかして、死神?……私を迎えに来たの?」  『ソレ』は首を横に振った。そして深い色の煙を出して……『ソレ』は人間の姿に形を変えた。そして、私に腕を伸ばしてゆっくりと抱きしめた。 「やっと見つけた、『サラ』」     
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