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私の朝は、それなりに早い。同居している伯父と従兄弟の陽介よりも早く起きて、二人を起こさないように静かに顔を洗って、制服に着替える。その上からエプロンをして……台所に立つよりも先に母の写真が飾られたお仏壇の前に座る。
おりんを鳴らして、手を合わせる。
ろうそくは、以前うっかり消し忘れてしまったことがあるので、それ以来絶対つけないよう心配性な陽介に言いつけられているので、この朝の儀式も随分と簡略化してしまった。今日の予定、時間割だったり部活のことだったりを心の中で何度も繰り返して、顔を上げる。お仏壇に置いてある母の写真は、今日も変わらず笑顔のままだ。
生前、毎日キラキラ光る星粒を振りまいていた母は、死んでもなお写真の中からそのオーラを放っている。そんな母の写真を見ていると、若く美しい時に死んだ母が羨ましく思う。
そこまでが、私の朝の儀式だ。
それを終えてから、私はようやっと台所に立つ。
トースターの中に食パンを二枚入れてダイヤルを回す。
フライパンをIHヒーターに乗せて、スイッチを押し……熱したフライパンに卵を三つ落とし、水を少しだけ流す。ジュージューという水の飛び跳ねる音を聞いていると、伯父さんが欠伸をしながらリビングにやって来た。
「おはようございます、伯父さん」
「おはよう、沙羅ちゃん。今朝は、目玉焼き?」
「はい」
「いやぁ、ごめんね。毎朝沙羅ちゃんにばっかり朝ごはんの支度任せちゃって……」
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