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「いえ、私、これくらいしかできないですし。……それに、お世話になってますから」
「その奥ゆかしさ、誰に似たんだか……妹とは大違いだなぁ」
伯父さんはお母さんの写真に目を向ける。
お母さんは、まあ……おおざっぱな人だった。パンは焦がすし、目玉焼きだっていつも焼き加減が違う。それでもお葬式の時は、大勢の人が泣いていた。
2年前、私が中学3年生の時、お母さんが死んだ。
小さな時から患っていた不整脈が原因で心不全を起こし、私が学校から帰ってきたときにはもう冷たくなっていた。
その表情に苦しんだ様子はなく、とても穏やかなものだった。……まるで、この『運命』を知っていたように。
お母さんの他に家族がいない私を引き取ったのが、お母さんのお兄さんである伯父さんだ。
伯父さんはバツイチで、この家には陽介という名の私と同い年で、同じ高校に通っている従兄弟もいる。きっと、私にとってもいい環境だと思ってくれたのだろう。
食卓に目玉焼きと焼いたパン、インスタントのスープを並べていると、陽介が大きな欠伸ををしながらやって来た。
「陽介、遅いぞ」
「まだ間に合うからいいだろ……何?今日パン」
「うん」
「えー、俺ご飯が良かったんだけど」
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