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「お前、折角沙羅ちゃんが用意してくれたんだから、我がまま言うな。なー、沙羅ちゃん」 「ねー、伯父さん」  二人で顔を見合わせて笑っていると、陽介が『なんだよ』と頬を膨らませていた。  朝ごはんの食器を洗うのは、陽介の仕事だ。  ジャバジャバと水を流す音が聞こえている間に、伯父さんは出勤する。  私は玄関までついて行って、伯父さんを見送る。……今日は一つ、伯父さんに伝えなければならないことがあるからだ。 「あの、伯父さん」 「ん? 何だい?」 「今日、部活の天文観察会があって、それで、帰るの少し遅くなります」 「ああー、いつもの。今日だったか。いいよ、気にしないで」 「……ありがとうございます」 「先生によろしく言っておいて、陽介だっていつも世話になってるし……先生、何て言ったっけ?」  伯父さんはこめかみのあたりを揉み転がす、必死に名前を思い出そうしているようだ。 私はそれに助け船を出す。 「アスミ、明日海先生です」 「そうそう、『アスミン』!」  伯父さんの口から出てきたのは、明日海先生のあだ名だ。それが少し面白くて、小さく笑みがこぼれる。 「いいよなあ、あれぐらいカッコイイと、女子高生にモテモテだろうなー。羨ましい」     
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