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「なら、来なきゃいいのに。明日海先生が送ってくれる、私のことは気にしなくていいんだって」 「……それが心配なんだよ」  陽介は、小さく呟く。しかし、その声は私には聞こえなかった。 「ん?何て?」 「いや、何でもねー。……げ、噂をすれば」  陽介の目線が校門に向く、そこには明日海先生が立っていた。  くしゃくしゃ天然パーマの黒い髪、銀縁のメガネで……ヒョロッと背の高い。それが我が高校の数学担当であり、私しか部員がいない天文部の顧問の先生だ。(本当は、明日海先生目当てで入部した女の子はいっぱいいたけれど、先生のオタクっぽい星トークに嫌気がさして、すぐやめてしまうのだ。)  どうやら風紀指導のため外に出ているようだが、……周り寄ってたかっているファンの女の子による人間の輪ができていて、その役割を果たしていない。 それでも、陽介はだらしなかった学ランのボタンと襟をきっちり留めた。 「……陽介って、明日海先生のこと嫌いだよね」  話しかけられる機会を極力減らすように、陽介は明日海先生が風紀指導の時だけきっちりと制服を直すのだ。 「え?……何だよ急に」 「いや? 何でなのかなって思って」  私はその渦のような人の波を尻目に通り過ぎ、少し前から気になっていたことを聞いてみた。 「……お前には関係ないだろ」     
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