物語の本

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あつい夏のうるさい蝉 都会の中の陽炎 有象無象の中の一つでしかなかった これは私が主役の物語 コンクリートが揺らめく、なんて歌詞が入った歌があったっけ 梅雨明けしてない中途半端な曇り空が不快指数をあげていくような蒸し暑さのなか、偉そうに突っ立ったビル共が右往左往していた いいざまだ 首を伝う煩わしさをハンカチで拭いながら学校へ行く どうせ今日も代り映えのしない一日だ 学校に行って授業を受けて帰る 親しい友達もいなければ部活動も入ってない 有ったらいいものなのかもしれないけど、無い私に価値はわからなかった 私には無縁の物なんだろうってことでかまわない 何かしたいけど何もしたくなかった 下校中、ふと視界の端に扉がうつる (あんなところにお店なんてあったっけ) 路地を通って扉を開けると涼しい空気と独特の匂いが私を迎えた ずらりと並ぶ本棚に本が埋め尽くされている (本屋…にしては何か、) 鮮やかな赤だったり、森のような緑だったり、今日の空のような動きのある灰色だったり 様々な表紙があるのに表にも背表紙にも何の記載もない 緑色の本を手に取って奥付をみてもやはり何も書いてない ただ文章だけが書いてある本 「なに、これ」     
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