1章 一つ目の七不思議

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 浜崎は一旦息を吸い込むと再び語り出した。 「それでやっぱ人おったんか思て一旦トイレから出てん。そんならちょうど寧々もトイレに行く途中で、さっきの個室のこと話したら、図書館の隣を通った人はいなかったはずだって言うねん。  うちは教えてもらうのに必死で気づかなかったけど、寧々は見てたみたいで。それでおかしいなって思って二人で個室を見に行くことにしたねんな」  浜崎は「ね」と矢野の方を見て同意を求めると、矢野は軽く頷いた。そして浜崎の代わりに話し出した。 「私が見に行ってみると確かにさっきの個室はしまっていたわ。物音もしなかったし。気味が悪いなと思ってうちもノックしようかと思ったの。  でも、1回目に扉を叩いた時にドアが開いたの。そして中を見てみたら・・・誰もいなかったの」 「え?じゃあ、誰もいないはずの個室からノックが帰ってきたってこと?」  僕はそう確認すると、浜崎も矢野も頷いた。特に浜崎は何回も頷いていて、よっぽど怖かったんだろうなということが伺えた。 「それはおかしな話だね」 「そうなんよ。おかしいやろ?んでこれ聞いた来夏がトイレの雅子さんや言うてびびらしてきてん」  浜崎さんは大きな声でそう言った。無駄に声がでかい。
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