1章 一つ目の七不思議

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「トイレの雅子さん?」  僕はその妙な名前に思わず笑いそうになった。  有名な怪談としてはトイレの花子さんがあるが、雅子さんと言うのは、実際にいる人の名前なのだろうか。 「そうなんよ。ねぇ来夏」  浜崎はこれ以上この話をしていたくないとばかりに佐藤来夏に話を振った。佐藤はニコッと笑って頷いてこれに返事をした。 「うん。そう。美香が見たのはきっとトイレに取り憑いた怨念なんだって。非業の死を遂げたこの校舎の建築者である井戸田萬斎の娘、井戸田雅子の怨念がありふれた都市伝説の形になって具現化したんだって」  佐藤はなぜか楽しそうにそう言う。僕がそんな佐藤を不思議そうに見ていると、浜崎はそんな僕に気づいたようで、声をかけてくれた。 「この子。昔っからこうなんよ。なんでも面白そうに話すし、変わったことが好きで・・・。今回だって私たちはこんなにビビって・・・いや、真剣に考えとんのに、この子だけ面白そうにして」 「だって、面白いんだもん」  佐藤はにっこりと笑って言った。先ほどから見ている限りではどうやら佐藤はこのグループのお調子者兼ムードメーカーのようだった。
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