1章 一つ目の七不思議

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 僕は続いてこの学校の校舎を建築した井戸田萬斎の娘、井戸田雅子についての資料があるかどうかを調べることにした。  噂の張本人について調べるのは当然のことだった。  校舎の設計者というだけあって井戸田萬斎について記載している本は何冊かあった。  井戸田萬斎。  建築家として名高い彼は、これまで幾多もの奇妙な空間を彩る建築物を設計して来た。  そのデザイン性は世界でも大きく評価される一方、その多くが建物内で事件や事故が多発すると言う曰く付きの建築家だった。  しかし、その謎も相まって、彼の建築家としての著名度は高い。  そんな井戸田萬斎の娘、井戸田雅子。  井戸田萬斎が23の時に出会った娘と恋に落ち、別れるまでの10年間の間に生まれた子供。今は40歳となり、父親と同じ建築家として活躍している。図書館にあった本にはそう記載してあった。 「なんだ。生きてるんじゃないのか?」  特に何歳の時に不慮の事故で亡くなったとかいうことは書かれていなかった。  しかも、スマートフォンで調べてみても、そんな事実はなかった。  どうやら雅子さんと呼んでいるのは浜崎さんたちの勘違いのようだ。
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