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「あれ?読むのやめちゃうの?」
僕は突然本を直しだした彼女にそう問いかけた。
「・・・そうね。今日はここまででやめておこうと思って。きりがいいところだったし。邪魔も入ったしね」
彼女はそう言うとじろっと僕のことを見た。別に邪魔がしたかったわけではないんだけど。結果的にそうなってしまっているのだから一緒か。
「借りて帰りはせーへんの?」
「ええ。ここで読むのが特別なの」
彼女は凛とした態度でそう言うと、再び席に腰掛けた。それを眺めていると、不思議なものでも見るかのように彼女は僕のことを見た。
「座らないの?」
「へ?」
僕はその言葉の意図が組みきれずに素っ頓狂な声をあげた。
「だって、あなた。私と話したいんでしょう?どういう意図かは知らないけど」
彼女は目を細めて微笑みながらそう言った。彼女の微笑みは、夕暮れの光と相まって幻想的な雰囲気を醸し出していた。
実のところ、本を読むのを邪魔してしまったのではという思いが強かったので、彼女が友好的な態度をとってくれているのは意外だった。
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