1章 一つ目の七不思議

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 一つ。ノックを返さない。これは中に人がいるのかと上から覗き込まれる可能性がある。もしそうなった時、僕は言い訳のしようがなくなる。だめだ。  二つ。ノックを返す。これで中に人がいると言うアピールができる。でも結局トイレの雅子さんの件と重なって中に本当に人がいるのか確認される恐れがある。ただ、怖いから中を確認まではしない可能性も高い。選択肢は一つしかなかった。  僕は3回ノックを返した。しかし、このとき、僕はとんでもない可能性を見逃していたことに気づいた。  彼女たちは、個室の中を確認しないにしろ、中に人がいるかどうかを確かめたいとは思っているはず。  なら、彼女たちが外で中の人が出てくるのを待ち受けていないと言う保証がどこにあるのだろうか。  しかし時すでに遅し。彼女たちはすでに騒ぎ立てていた。 「やっぱり!もうあかんて。はよここから逃げよ!」  浜崎は相当ビビっているようで、大きな声で取り巻きの3人にそう言った。 「待って、でもまだ中に普通に人がいると言う可能性もあるわ。声をかけてみましょう」  矢野はそう提案した。が、やめてくれ。僕が声を出せるわけがないだろう。
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