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「なんでわかったの?」
僕は正直に疑問を口にした。
「なんとなく、よ。それにあなたは少し考えていることが顔に出やすいみたい」
彼女は細目でクスクスと笑いながらそう言った。
「そんなのわかるんだ。すご」
僕が感心しているような顔をしていると、彼女は呆れた顔をして言った。
「あなた考えてることがバレバレなのよって言ったの。バカにしたのよ?わかってる?」
「え?そうなん?」
キョトンとしてしまっている僕に対し、はぁとため息をつくと彼女はもう一言。
「それと。あなたは気づいてないかもしれないけど、私、先輩よ?」
「え?そうなん?って、あっ。そうなんですか?」
僕は今更ながら態度を改め直す。とは言っても言葉遣いを少し正しただけだが。それにしてももっと早く言ってくれればよかったのに。
「そうよ。大先輩よ。いきなりタメで話しかけてくるからびっくりしたわ」
「それはそれは失礼しました。それで・・・あの、名前は?」
僕はそこまでなんとなく聞きそびれていた彼女の名前を聞いた。
「そういえば名乗ってなかったわね。私は・・・鶉野叶恵。あなたは?」
「僕は鷺森悠って言います。よろしくお願いします。鶉野先輩」
僕はなんとなしに鶉野先輩に握手を求めて手を前に出したが、先輩はその握手には応じなかった。
「よろしくする義理はないわ。鷺森くん?用があるならさっさと話す。用がないならさっさと帰ってもらってもいいかしら?」
鶉野先輩はそう冷たく言い放つと、静かに図書館のドアを指差した。
それが僕と先輩との初めての出会いだった。
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