1章 一つ目の七不思議

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「道場にこうへんなと思って坂巻さんとこに連絡してみたら、何やら行方不明になった言うて。お前学校でなんかあったとか知らへんか?」 「いや・・・僕学校で莉音とほとんど話さへんかったし」 「そうか・・・そんならええんやけど」  会話が終わると僕は急いでシャワーを浴びて汗を流した。リビングではすでに母親が朝食を作ってくれていた。 「悠、ご飯できてんで。早よ食べて学校行きや」 「わかってる」  正直その時間にご飯を食べ始めたら余裕で学校には間に合うのだが、親父との会話で若干時間は押していた。  母親の言う通り素早く朝飯を食べて学校へ向かう。朝食はいつも日本食だ。白米に納豆、味噌汁といった日本の定番の朝食だった。  さっさと食べ終わると、僕はカバンを持って学校へと出発した。  僕が通う高校は私立釘塚高校。いわゆる有名私立だった。  校舎は有名な建築家、井戸田萬斎の設計らしく、校舎建築にどれぐらいのお金が使われたのかは想像に難くない。  井戸田萬斎というのは世界的に有名な建築家では無いのだが、初代の学園長がファンであり無理矢理に彼に設計を頼むことを決めたらしい。  井戸田の建築は独特のディテールで熱狂的なファンも多い、らしい。そこらへんの機微については僕の理解からは外れている。
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