1章 一つ目の七不思議

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「竜五には無理かもな」  僕はケラケラと笑いながら竜五とともに教室へと歩いて向かった。 「なぁ竜五、最近起こってる行方不明事件、どう思う?」 「行方不明事件?それって、神隠し言うて話題になってるやつかいな?」 「そう。それのことや」  僕たちが話していたのは、最近この学校の生徒が数人行方不明になっている事件のことだった。  しかし、親の意向や学校のメンツがあるからなのか、事件として公表はされず、いなくなった生徒は一様に風邪で休んでいることになっている。  すでに警察は動いているらしいのだが、マスコミなどには規制がかかっており、生徒サイドには一切情報が回ってこない。  そのために生徒の間では格好の噂の的となっていた。 「神隠し、いろんな噂が飛び交っとるな」 「竜五なら何か知っとるんやないかと思って」  竜五はその見た目から不良のように見えるが、実際は多方面に友好関係を保っていて、いろんな情報を多方の筋から得ることが多いのだ。僕がそう言うと、竜五はニヤッと笑って言った。 「そのあては外れへんなぁ。もちろんわいは神隠しについて情報を集めとるで」 「お!それ教えてくれよ!」 「それはええけど・・・悠がそないなことに首突っ込むなんて珍しいな。ゴシップなんてそない好きちゃうやろ?」  竜五の指摘通り、僕はそういった噂の類にそこまで興味を示す方ではなかった。しかし、今回のは事情が違う。  門下生が行方不明となれば、その師範の息子という立場からすれば、気になるところではある。
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