メイドくんと執事ちゃん

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 多分、あの時彼女が痴漢に遭っていることをわかっている生徒はもっといた。けれど誰も助けようとはしなかった。瀬名倫太郎以外は誰も。  その事件以降、同じクラスで彼を見ていると、他の男子が渋ったり躊躇するようなこと――困っている女子に手を貸したり、イベントの委員や係を引き受けたり――をごく自然にこなす場面がよくあって、何だか他の男子とはちょっと違う人らしいということがわかったのだ。 「えーと、だから何が言いたいかっていうと、綺麗な見た目だけで瀬名くんのこと『女の子みたい』って思う人ばっかりじゃないってこと、なんだけど……」  だんだん自分でも何を言いたいのかわからなくなってきて、由宇は困った顔で倫太郎の様子を窺い見た。
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