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ほんの少し、胸の奥が騒ついた。
この高校の文化祭の後夜祭は、生徒達の間で「カップル祭」と呼ばれていた。キャンプファイアの周りでは男女が愛を告白し、カップル達は打ち上げられるささやかな花火を寄り添いながら見上げる。参加は自由なので、相手に当てのない生徒はとぼとぼ帰るか、集まってカラオケなどで憂さ晴らしするのが定番である。
由宇は頬を掻きながら苦笑いした。
「ん……帰ろうかなと思ってる。一緒に残る相手もいないし、遊びに行くのもちょっと疲れたから遠慮したいし」
「特に用があるわけじゃないんだ?」
「うん。家に帰ってのんびりするだけ」
「じゃあ残って」
「……!」
今度こそ、由宇の心臓は煩いくらいに騒ぎ出した。
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