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何かの意志を籠めた強い瞳。真剣な表情で真っすぐこちらを見据えてくる、男の子。
「あ、あの……」
「残って」
「う……うん、わかった……」
静かだが有無を言わさぬ強い声に押されて、由宇は頷いていた。
「ありがとう」
安堵したように、倫太郎はにっこり笑った。
それは大抵の人を魅了する、人形のように可愛らしい笑顔だったけれど。
「引き止めてごめん。遅れたら店長煩いから、急いで」
「う、うんっ」
慌てて階段を駈け下りながら、さっきの笑顔が由宇の瞼の裏に何度もちらつく。
(あんなに可愛い笑顔だったのに、メイド服、似合ってなかった……)
その理由がわかった気がして、由宇の胸に心を弾ませるような後夜祭への期待が広がっていった。
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