メイドくんと執事ちゃん

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「まさか……あんなに混むとは思わなかったね……」  ぼんやりと空を仰いで、由宇がぽつりと言った。隣で足を組み、その上に肘をついている倫太郎が返す声にも、溜め息が混じっている。 「ホントだよ……休憩二十分でまた後半も出ろとか、店長は鬼だ」  営業時間前半、喫茶店は盛況だった。そして一般客はともかく学内の生徒の殆どは、由宇と倫太郎目当てに来店したと言っていい。二人ともそれなりに有名人なのである。 「まるっきり客寄せパンダだよね、私達……」  苦笑いと自嘲の間の顔で由宇が零した呟きに、倫太郎がぱっと顔を上げた。 「あっ!」 「え、何?」 「すっかり忘れてた。これ、酒井の落とし物じゃない?」  エプロンのポケットから倫太郎が取り出したのは、パンダのマスコットが付いたキーホルダーだった。『客寄せパンダ』という言葉で思い出したらしい。
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