メイドくんと執事ちゃん

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「あ! そう! 私の!」  さっきまでの憂鬱そうな表情から一変、由宇は瞳を輝かせて身を乗り出した。 「どこにあったの?」 「今朝、バス降りる時に酒井が座ってた座席に転がってた。すぐ渡そうと思ってたんだけど、喫茶店の準備で慌ただしくて忘れちゃってた。ごめん」 「ううん! ありがとう! 見つかってよかった~。今朝学校に着いたらなくなってて、気に入ってるやつだったからすごいショックで――」  興奮気味に喋っていた由宇だったが、倫太郎がまじまじと自分を見ているのにはたと気付いて口を噤んだ。 「あ……ごめん。私みたいなのがこんな可愛いの持って喜んでたら変だよね」  昔からそうだった。服を買いに行けば男の子が着るようなデザインのものばかり勧められ、女の子達の人形遊びには入れてもらえず、仕方なく男子とサッカーをすれば大活躍。ますます「女の子らしさ」から遠退いていくばかり。  本当はお菓子作りや手芸が趣味だし、ファンシーグッズにも目がないのだけど……。 「変じゃないよ」
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