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「なっ……何のことだ……」
シラを切ろうとする犯人を、倫太郎の鋭い視線が射抜く。
「この手が悪さしてるとこ、はっきり見たんだけど?」
被害者の女子を庇う位置に移動しながら低い声で迫る倫太郎に、会社員らしき中年の犯人は半ばパニックを起こしながら喚き出した。
「しっ知らん! ボクは知らないぞ! 言い掛かりも大概にしろ、ガキ!」
「――私も!」
気付けば由宇も声を上げていた。
「私も見てました! あなたが痴漢するところ!」
「ぬっ、ぐっ……!」
結局犯人はバスの営業所まで連れていかれることになった。そちらはもう然るべき人達に任せて、由宇達は普段より若干遅れて学校に到着した。取り敢えず学校で降りることになった被害女子が気掛かりで、由宇は保健室で彼女の気持ちが落ち着くまでそばについていた。ありがとうございます、と涙声で言った彼女の姿は、今も忘れられない。
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