そしてふたりは、

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 ばいばい、とまるで友達と別れるときのように、少年は大きく手を振って店を出ていった。  取り残された私は、しばらくした後に、はっとする。  さきほどまで行き場をなくして狼狽えていた手は、気づけばぎこちなくも少年に手を振り返しており、頭の中では、少年と本の感想を話す自分の姿を思い浮かべて、どきどきとしていた。  いや、違う。その言葉は適切ではない。  私は、人と話すことを想像して初めて、どきどきではなく、わくわくしたのだ。  了
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