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今日もマンガコーナーで流行の少年マンガの見本を夢中で立ち読みしている彼らを横目に、私は斜めになったポップを直したり、巻数がばらばらになっている本を並べ替えたりしていた。
最近は電子書籍で手軽に本が読めることもあって、重くてかさばる単行本を買うお客さんも減ったなあ、などと思っていると、珍しく単行本の新刊が並べられた棚の前に、一人のお客さんの姿があることに気づいた。
そのお客さんが私の目を引いたのは、彼がそこにいることが、とても意外に感じたからだ。
いる場所を間違えているのではないかとすら思った。
なぜなら、彼と同年代のお客さんは、みんな店の奥にあるコーナーに行ってしまうのだから。
身長は、私の胸の辺りくらいまでしかない。小柄な体に、華奢な手足。
どう見ても小学生だった。
大きさから言って四年生くらいかな、と思ったが、本の背表紙を熱心に眺めているその聡明な眼差しは大人びていて、かなり幼さを残した中学生のようにも見える。
本を熱心に眺めていたはずの少年は、自分を熱心に眺めている視線に気づいたらしい。
こちらを振り返ると、つかつかと歩み寄ってきた。
子供なのに妙な威圧感があって、私は大人だというのにたじろいでしまった。
「あの。すみません」
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