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少年の視線に、私はしどろもどろになった。店員としてならなんとか会話ができるが、役割を離れた一人の人間としてだと、途端に言葉が喉につっかえる。
本の読みすぎで、言葉は無限に頭の中で渦巻いているのに、そこから必要な言葉を抜き出すことができないのだ。
ああ、なんて無駄な脳内。
私は少年の肩から手を離して、もじもじとした。きっと端からは告白する前の女子学生のようにしか見えないだろう。
そのような姿を急に見せられた目の前の小学生男子は、困惑を露わにしていて、もしこれが外だったら通報されかねない状況だ。
私は南京錠でもかけられているのかと思うほど固く閉ざされた口を、無理矢理にこじ開けると、ようやく目的の言葉を吐き出すことに成功した。
「藤代修二の本、あり、ます。えっと、私の、で良ければ、なんですけど……」
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