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「なぁ、知ってるか?1番隊長のこと」
「レーガン隊長のこと?」
「違う、違う……レーガン隊長の前の隊長のこと」
「あぁ、ギルドマスターの子供で最年少で隊長になったっていう?」
「そう、その人」
「でも知ってる人いないらしいじゃん、その人のこと」
「何でも、任務中に突然消えたんだと。 その時に、みんなの記憶からその人の記憶だけ無くなったらしい」
「じゃあ、何でお前が知ってるんだよ」
「レーガン隊長から聞いた」
「あぁ、お前1番隊員だもんな」
ギルド本部の番号付き隊員の執務室がある階にある休憩所で若い隊員らが何やら話をしているらしい。
耳を傾けると、どうやら行方不明になっている前1番隊長の話らしかった。
「なぁ、その人の名前は何と言うんだ?」
「えっと、何だっけなぁ……たしか」
「リューレスト=アルバート、 " 夢幻の魔法使い" 」
「そう、それだ!」
彼らの後ろからその名が呟かれ、肯定するように勢いよく振り向いたところで彼らは「あっ……」と情けない声を漏らした。
「お、お疲れ様です! レーガン隊長!」
「お疲れ様。 ……おい、時間だぞ!」
噂話をしていた二人にはほとんど目もくれず、休憩所の奥でコーヒーを飲んでいた一人の青年を呼んだ。
「へーい!」
3番隊員のレオンだ。
彼もまた、リュートを覚えていた一人であり、彼の友人であった。
彼らは今もリュートの帰りを待っている。
夢か現か。
皆の記憶に残っていなくても、自分たちは憶えている。 幾度とばかり救ってもらった。
だから彼が帰ってきた時に、変わらない場所があるということを。彼が護った場所で、いつまでも──。
蒼々とした空の下、今日も彼らは駆け回る。
" 夢幻の魔法使い" 、彼が再び戻るその日まで。
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