prologue

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 夜も更け、月の光がわずかにしか入らない木が生い茂った森に子供が一人、ポツンと佇んでいた。  中性的な顔立ちの子供は、夏が過ぎ夜は少し肌寒くなってきたこの時期に半袖半ズボン姿だった。 「君、こんなところでどうした?」  少し離れた場所から子供に声をかける。  声に反応したのか、肩を小さく震わせキョロキョロと辺りを見渡す様子をみて、ゆっくりと近づいていく。 「や・・・来ないで・・・僕なんか、おいしくないよ」  魔物と間違えているのだろうか。逃げようとする子供の横に移動し、肩に手をおく。  小さな悲鳴じみた声が聞こえた気がするが、構わず子供の目線に合わせてしゃがみこんだ。 「大丈夫、俺は敵じゃない。キミ名前は?どこから来たんだい?」  ”ボックス”から防寒用のローブを取り出し、子供の肩にかける。 「・・・リュート。リューレスト=アルバート。リリアナ村から来た・・・」  リュートはローブの裾を握り、俯きながら答えた。 「リュートか。俺はアランだ、よろしくな」  リュートの頭を優しくなでると、抱き上げる。 「とりあえず、リリアナ村まで送ろう。ご両親も心配しているだろうからね」 「だ、ダメ!」  リリアナ村へ向かおうと方向転換したところでリュートは大声をあげた。  不思議に顔を向けるとリュートは顔を強ばらせている。 「魔物が・・・」 「魔物?」 「魔物がたくさん来て、村のみんなを食べちゃった。父さんと母さんが魔法を使って僕を逃がしてくれたけど・・・」  ローブを握る手は、その時の恐怖を思い出したからなのか。それとも怒りからなのか
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