epilogue

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「 龍人、ここにいたんだ」 大会も無事終わり、ようやく落ち着き始めた頃、季節は秋に移り変わっていた。 週に一度、家の近くにある小さな神社に来ていた。 向こうで最後に訪れた神社よりも断然小さな町の神社。 偶然かあの神社と同じ" お稲荷さん" と呼ばれていた。 きっとお狐様が導いてくれたのだと、今思う。 わずかに残るリューレストの魔力を込めて、届くかわからない手紙を週に一度、この神社から向こうの世界へ届くように祈る。 リューレストは向こうでは存在しなかったことになると、葵は言っていた。 だけどもし、覚えてくれている人がいるならば、御礼と無事を伝えたい。 そう思い立ってこの場から手紙を送り始めたのは、インターハイが終わってからだった。 境内の賽銭箱の裏に、少しだけ魔力を込めて転移魔方陣が描かれた紙の上に乗せ、いなり寿司と共に供える。 運が良ければ、届くだろう。 転移先は、アランの執務室に指定している。 きっと彼ならば……と僅かな希望を込めて。 「ねぇ、無視しないでよ」 クイッとTシャツの裾を引っ張るのは、" 葵" だ。 この世界の、と言うべきだろうか。
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