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就活に失敗し、実家に戻ることにした。
大学に残ることも考えたが、経済的にキツくあきらめざる得なかった。
とは言え、実家に戻ったところで仕事があるわけではない。
バイトをしながら就活を続けている。
そんなある日、バイトの帰り道、卒業した高校の前を通ると文化祭の看板が出ていた。
もうそんな時期か、と思う。
そして、六年前の文化祭を思い出す。
当時、私は高校二年で演劇部に所属していた。
文化祭で上演する演目が決まり、部長が買い出しに行くというので私は自ら荷物持ちを申し出た。
無論、親切心からだけではない。私は彼女に恋心を抱いていた。
度胸の無い私は告白もデートに誘う事も出来ずにいたが、荷物持ちなら何とか切り出せた。
「じゃあ、今度の土曜日に行くから、遅刻しないでね」
そう言った彼女が、待ち合わせの校門に来なかった。
交通事故に遭っていたのだ。
もう、文化祭どころではなかった。
私は演劇部を辞めた。
彼女が居なければ、芝居をする意味もなかった。
私は今、待ち合わせの校門の前にいる。
いくら待っても、彼女が来なかった場所に。
「もう、遅いぞ」
懐かしい声に振り向くと、そこに制服姿の少女が立っていた。
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