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「きゃあー!早い!早いよ!」
「ほら、ちゃんとつかまれ!落ちんぞ!」
ブレーキのきかない自転車みたいに麻斗君がスピードを上げる。
思わず、荷台の端っこを掴んでいた手を麻斗君の腰に回した。
坂道はその速度をより一層早めて
「怖い!スピード落として!」
まるでジェットコースターにでも乗っている気分。
振り落とされそうで、あたしはギュっと彼にしがみついた。
怖いのに
ドキドキと胸が鳴る。
広い背中と鍛えあげられた体は、思っていた以上に男の人で。
男の人の体に触れた事のないあたしの鼓動は、爆発寸前だった。
でも、麻斗君、
「ほんとに怖い……」
涙声で最後にそう呟くと
「ついた」
ゆっくりと自転車が止まった。
あたしは、ギュッとをつぶっていた目をそっと開けた。
麻斗くんは堤防まで走ってきていて
「わぁ……」
目の前には鮮やかなブルーが広がっていた。
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