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麻斗くんだ……。
――『次から待つ時は連絡しろよ。勝手に待つな』
そう言って、夜の海で赤外線受信をした。
小さな機械の中に麻斗君との繋がりが出来たあの夜から、実際にかかってきたのは、初めてだった。
麻斗君は受信専用。
かけるのはあたしだけだと思っていたのに。
麻斗君の存在をあたしに伝える白の携帯。
ボタン一つ押してしまえば、麻斗君に繋がる。
あたしは一度深呼吸してから、ボタンを押した。
「はい…」
「翼?」
語尾の上がり方。甘く響く低い声。
間違いなく、麻斗君だ……。
「今日行く?」
「……うん」
「あ、そっか。俺、今日はちょっと」
「来れない?」
「いや、来れないっていうか、遅くなりそうでさ」
「そっか……」
「ん。待て。お前、今どこ?」
「……どして?」
「来れない?って聞き方変だろ。今、どこにいるんだよ」
「……」
「言え。こら」
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