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あたしは麻斗君の自転車の後ろに乗って、目の前のシャツを掴む。
「俺、そろっと持たれるの苦手。ゾワッと来る。ゾワッと」
自転車に跨って両手を離す麻斗君は、手のひらを空に向け、指を何度も曲げて、ゾワゾワを表現した。
「こそばいって事?」
「そ。持つならガシッと持って。前みたいに」
言って、あたしの手を腰に回した。
「行くぞ!」
「ひゃっ!」
驚いたと同時に自転車が走り出す。
今日の麻斗君の自転車もすごく早かった。
「麻斗君。学校は?」
「え?何―?」
風を切って走る自転車。
声が後ろへ流されていって、麻斗君にはよく聞こえないみたい。
あたしは声を張り上げて
「学校―!」
「さぼりー」
よかった、聞こえたみたい。
麻斗君も普段は出さないような声で答えてくれた。
でも、サボりって。
あたしのせいだよね……。
「…ごめんなさい」
「ん。何―?」
やっぱり、呟く程度だと聞こえないみたい。
ごめんなさい…
あたしは麻斗君を掴んだまま、心の中で謝った。
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