13/13
前へ
/33ページ
次へ
あたしは麻斗君の自転車の後ろに乗って、目の前のシャツを掴む。 「俺、そろっと持たれるの苦手。ゾワッと来る。ゾワッと」 自転車に跨って両手を離す麻斗君は、手のひらを空に向け、指を何度も曲げて、ゾワゾワを表現した。 「こそばいって事?」 「そ。持つならガシッと持って。前みたいに」 言って、あたしの手を腰に回した。 「行くぞ!」 「ひゃっ!」 驚いたと同時に自転車が走り出す。 今日の麻斗君の自転車もすごく早かった。 「麻斗君。学校は?」 「え?何―?」 風を切って走る自転車。 声が後ろへ流されていって、麻斗君にはよく聞こえないみたい。 あたしは声を張り上げて 「学校―!」 「さぼりー」 よかった、聞こえたみたい。 麻斗君も普段は出さないような声で答えてくれた。 でも、サボりって。 あたしのせいだよね……。 「…ごめんなさい」 「ん。何―?」 やっぱり、呟く程度だと聞こえないみたい。 ごめんなさい… あたしは麻斗君を掴んだまま、心の中で謝った。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加