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砂浜に目を落とすと、キラリと光る物が見えた。 なんだろう…… あたしは、そこへ手を伸ばす。 これって……。 砂の中からそれを取って掌にのせる。 指の間から、砂たちがパラパラと滑り落ちて 残ったのは、ピンク色の貝殻。 「……桜貝?」 あたしの手の中にある貝殻を見て、麻斗君が言った。 「そう言うの?」 「さぁ?知らないから聞いたんだけど」 「そっか。あたしもわからないや」 ピンク色の可愛い貝を見て、微笑み合う。 カモメが一羽、飛んでいく。 あたしは砂浜を歩いて、小さな瓶を見つけた。 空っぽの空き瓶。透明で新品のように綺麗だ。 拾った貝を瓶に入れた時、脳裏にふわふわと浮かぶのは、幼い頃の思い出だった。 あれは、あたしが 5歳だった頃――……
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