2/12
前へ
/33ページ
次へ
やっと泣き止んだあたしの手を引き、麻斗君が歩き出す。 「どこへ行くの?」 「いいとこ」 見上げて聞くと、麻斗君が微笑んだ。 あたしは、麻斗君の大きな手に包まれて、彼についていく。 ここは彼の地元なんだろうか。 迷いなく足を進める彼は、どこを目指しているのだろうか。 堤防を歩いていくと、カランカランと音を立てて歩く、小さな女の子が見えた。 虹色の帯をつけて、フリルのついた可愛い浴衣を着て下駄を鳴らして歩いている。 あたしたちはその子の後を辿る様に同じ道を歩いて、長い石段を登る。 登りきった視界には、沢山の屋台が並んでいて―― 「……お祭り?」 「正解」 そこは、田舎町のお祭りだった。 金魚すくいに夢中になってる男の子。 綿あめを友達とわけっこしながら食べる女の子。 夏の暑さが和らいだ夕方時の夏祭りは、 あたしの目に輝いて映った。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加