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さわさわと揺れる木々。 薄暗闇に灯る提灯。 並ぶ屋台の奥には境内。 神社で開かれている小さなお祭り。 「麻斗君、お祭りとか来るんだ…」 「普段は来ない。人混み嫌い」 だよね。そんな感じ。 「キライなのに、いいの?」 当たり前のように手を繋いでくれる彼。 人混みからはぐれないように、あたしの手を引いて、より体を近づけて 「嬉しくねぇの?」 質問に質問で返された。 「翼はガキだから、喜ぶと思ったんだけど」 そして相変わらず上から目線で物を言う。 でもこれが彼の優しさ。 向けられた笑顔が眩しくて―― 「嬉しい。ありがと」 「素直でよろしい」 目を細めて言うと、頭をくしゃくしゃにされた。
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