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ふと脳裏に正毅の顔が映って
――違う。いらない。
――正毅なんて、いらない。
ブンブンと頭を振った時
ヒュ――……ドン。
大きな音がなって、見上げた空には一輪の花。
「花火……」
「少しだけどな」
パラパラパラ―
落ちてきた火の粉が、彼の横顔を淡く縁取る。
少しの沈黙の後、彼は花火を見つめたまま――
「お前さ、言っただろ?
可哀想な子だと思われてたって
それで傍にいてくれたって」
「うん……」
静かに話し出す。
あたしの傷を。正毅との悲しみを。
止んだと思っていた涙が再び溢れそうになって、俯くと。
「つばさ」
まるで羽が生えたかのような声で彼が呼ぶ。
顔を上げると、こちらを見た麻斗君の透き通った目にあたしが映っていた。
「それって、可哀想って、言われたのか?」
「……」
「同情してたって、言われたか?」
「……」
「アイツはお前を見下したか?」
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