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「お。前田。早いな。ちょっと手伝ってくれ」
その時、通路の奥から声がした。
ドキッとして目をやると
担任の先生がプリントやら地図やら沢山抱えて近づいてきていた。
その声に
ハッと顔を上げる正毅と
振り向いた里奈。
小窓を通して、目が合った。
歯がガタガタと触れて、目に熱くしみるものがある。
滲んだ世界に映ったのは、驚く正毅の顔。
口を半分開けてこちらを見ている。
雷に打たれたかのように動かない正毅の前で
「翼…」
里奈の唇が動いた。
切なげに見つめる里奈に、黙って首を横に振って
あたしは……
「翼!」
逃げた。
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